シーン1-1:

そこにいるのは、ウルリッヒ・ブラウ、立花世良、蓮見 鈴、矢川谷保、潮 美月、菱 雅美。
場所は第4菱垣研究室。
研究室と銘打ってるが、美月のセカンドハウスである。
過1/α装置。
詳しい説明は省く。
人間の脳波中でタダのノイズとされたこの波が、人類の次の可能性を引き出すキーワードだったなど、20世紀の科学者は考えただろうか。
事実、この過1/α波が今回の人魚騒動に関連し、その脳波が他の人間より強い事でマーメイドウィルス(MV)と名付けられたウィルスの発育を抑制することが認められている。
そしてその結果が得られた裏には、決して少なくない悲しい物語が多くあった。
ジェレミーの死、それを交渉材料にしようとして抹殺された研究者、ナンバーの振られた死体。
この犠牲も氷山の一角であろう。
世良は手を動かしながら受信機の最終チェックに入った。
「本当に、いいのか?」
「ん、なにが」
答えるのはその傍らにいる雅美だった。
ここに機材や部品を運び込んでから2日たっている。
世良は頭の中で言葉を選んだ。
「なんの準備もせず、いきなり本試験なんだぞ」
「自分で設計したんだよ、納得はしてるって。ダメなら私の責任、あ〜でも世良のお兄ちゃん達にかけた迷惑とかには責任はとれないかぁ」
ヘラヘラと笑う雅美に世良は床を一度叩いた。
「そんな迷惑とか責任とか考えなくていい、不安じゃないのか? 怖くないのか?」
「不安だし怖いよ、でもさ科学の進歩って誰かが一歩を踏み出していく行為の連続でしょ。だから気持ちは『世界で初めてナマコを食べた人』の心境」
笑顔で返す雅美。
世良が思ったほど、雅美には友人と呼べる人間はいなかった。
そもそも遊んでいられるほど特待生は暇じゃないというのもある、それ以外にも理由があることを理解した。
雅美の目だ。
その目で見られると、心の壁をぶち抜いて見通す様な目。
全てを理解しながらも、自分が姉と慕っていた人間に実験対象になっていたと知っていても。
自分が特待生に選ばれたのは、自分もMV適合者であることを自覚しながらも。
それを受け止めて受け入れて、笑っていられるその強さに、人は目を背けてしまう。
「ごめん、君が自分で設計図をひいたってトコで、もう全部納得済めだったんだよな」
「そうだね」
「……!」
少しの沈黙の後、しゃがんで作業していた世良の背中に雅美が乗っかった。世良の頭の上に雅美が自分の顎を乗っけながら喋る。
「世良のお兄ちゃん、これ終わったらどっか遊び連れてって」
「なんで僕?」
「なんか、女の子と一杯遊んでて慣れてそうだから」
「ひどいなぁ、こう見えても身持ち堅いのに」
「あ、そうなんだ」
「でも、ここだと遊ぶ場所もないな」
「来月ね、修理おわった海凰がテスト航海に2週間でるんだって」
遊びたいといった雅美の言葉の意味は、額面通りじゃない事を世良は理解していた。
この騒ぎが終わり、いつもの生活がやってくることを祈っている。
根拠なんて物はどこにもないが、希望を持つことはいいかもしれない。

シーン1-2:

「一応完成だね」
谷保の大アクビと4日目の朝、それは完成した。
いままで受信だけだった過1/α受信機に送信機能が加わったものだ。
サイズは部屋の半分が埋まってしまう程になっていた、電源もウルリッヒがどっかの地中配線を一本引っ張り込んできたものだ。
「おつかれさま谷保さん、ウルリッヒさん」
鈴が湯飲みにコーヒーを煎れて谷保とウルリッヒに手渡す。
「後は小型化と量産化だね」
「ずいぶんとこだわってるな、谷保」
思えば半年近く、谷保は過1/α送受信機の小型化と量産化にこだわっていた。
「過1/αは海中でも通る、どの波よりも早く。エコーの様に障害物に邪魔もされず海流の層にも影響されない」
「それって、きっと新しい海中での通信手段になるとおもうなボクは」
「蓮見くん、大正解」
「なるほどね」
「通信手段としてじゃなくても、海底でのGPSの様な物にでも応用はできる。対象から何にも影響されず直上に所在地が送れる、流されていてもすぐに判る。海底救助にも応用は利く」
「過1/αをシグナル化して、個別を判定するのか。いいなそれは」
「蓮見くん、悪いけど世良くんに完成を伝えておいて。実験日を美月さんと相談して決め手おいてって。わたしはそれまでちょっと寝るから」
「判りました、お疲れさま」
その後、美月達との話し合いの結果、実験開始は3日後となった。
谷保は実験開始5時間前まで一度も目を醒ますことなく、今までの疲労を一気に開放した。

シーン2:

有明晴海と瀬戸内夏姫。
二人がいたのは学校近くの喫茶店だった。
テーブルを挟み4人が座れる所、晴海と夏姫が片方だけに二人とも座っている。
これが意味するところは一つだ。
正面に座る人を待っている。
「すみません、前のバイトが押して遅れちゃって」
待っていた二人に声を掛けたのはスレンダーな女の子、っぽい男の子。
遠野秋桜の彼氏、桝家春海だった。
「有明さんと瀬戸内さんですね? 初めまして桝家です」
「初めまして」
「十分も待ってませんから、お気になさらず、初めまして瀬戸内です」
「そう、それは良かった」
白い清潔なワイシャツにスリムジーンズ、ショルダーバッグを置いてウェイターにコーヒーを頼み話を切りだした。
「で、話って言うのは秋桜さんの事でしょ?」
「ええ、その前に見て欲しい資料があるの。私たちが出会ったいろんな事件、得た資料その全て。秋桜さんの事がもし大切なら、あなたにも当事者になってもらいたくて今日はお呼び出ししたの」
夏姫の言い腰はとても柔らかいが、言いたいことはとてもストレートだった。
「あ、瀬戸内さんの言い回しは気にしないでくれ。きっと君になら回りくどく説得とか、説明するよりも実際その目で見て貰った方が納得できるだろうと、僕たちは思ったんだ」
「ボクもそうおもいます、ちょっと時間をくださいね」
春海は笑顔でそのホロノートを受け取った。
海凰での事件、事故、アンノ君との遭遇、ジェレミー教授の拉致と死、夏姫の誘拐、副社長の箱船計画、今まで得た情報の全てがそこにはあった。
「お待たせいたしました」
ウェイターがコーヒーを三人の目の前に置いていく。
資料を春海が読み終わるまで少しの時間、夏姫がコーヒーを手に取り口を付けようとした時、春海が手でそっと合図した。
『飲むな』と。
トンカリトン。
春海が指で机を叩き始める。
晴海も夏姫もそれがモールスであることにすぐ気づいた。
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『前にここでバイトしたことあるんだけど』
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『従業員の顔ぶれが全部違う』
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『飲み物とか気を付けて』
春海は資料に目を通しながら、表情を変えることなくそれだけ叩く。
夏姫はコーヒーカップを降ろし、それが不自然にならないようシュガーポットを手に取った。
晴海は机の下に不自然な突起物を見つける、盗聴器だろう。
数分後春海が大きくため息をつきながら、ホロノートの電源を切った。
「多分、お二方がボクにやって欲しいことは、秋桜さんを副社長から切り離すってことでしょ?」
「話が早くて助かります」
春海はおしぼりでコップの水滴で濡れたテーブルを一回、撫でるように拭いた。
「少し、考えさせてください」
「やです」
即答したのは夏姫の方だった。
笑顔でゆっくりとした声ではっきりと。
「私は最初にいいましたよね『当事者になってほしい』って」
春海はなんとも判断付かない表情だった。
「ここじゃなんだから場所かえませんか?」
「必要ないですよ、このままお話ししましょう」
店員達は何事もないようにテーブルを拭いたり、仕事をしている。
「ボクは、彼女が選んだ道だとしたらそれに対して異議を唱えるつもりは一切ないよ、秋桜さんだって大人なんだ、自分で考えた道ならボクには反対できない」
「それは違うんじゃないかな……」
今度は晴海が口をだす。
「僕なら、もし僕が君の立場なら連れ戻すよ。もし僕が秋桜さんの立場なら、信じてる人からの間違っているってメッセージは受け止めるよ。それが好きな物同士の信頼だとおもうから」
「ちょと晴海くんの言い方は判りづらいけど、私もそう思う。この資料とか見てあなたが秋桜さんに言ってあげられる言葉はなに?」
「もし、ボクが言っても秋桜さんが拒否したら?」
「その程度の関係なら、そのまま別れちゃった方がいいと私は思うけど」
夏姫はコーヒーカップを手にとって冷めたコーヒーをゆっくりとかき回した。
「この中に睡眠薬が入っていても、毒が入っていても私は信じて飲めるわ」
夏姫はそのコーヒーを一気に飲み干した。
「私の横には信じられる人がいるから、その人に任せておけば私は目を覚ますことが出来る。それが信じるって事だとおもうから」
夏姫はニッコリと晴海を見つめて笑った。
「判った、けど秋桜さんとの話はボクが直接するから」
その言葉は晴海には届いたが、夏姫には届いていなかった。
「じゃあ、よろしく頼むよ」
晴海は自分に寄りかかる夏姫をそっと抱き上げる。
「でも、どうやってここをでていくんです?」
気のせいか店員がレジ付近に集まり始めている。
「ん? そのまま会計をしてでていくんだよ」
「そんなコトしたら」
「大丈夫、こんなコトもあるかとおもってね腕利きを呼んで置いたんだ」
春海は辺りを見渡す。
自分たち以外の客といったら、ドア近い席でおしゃべりをしている男女のカップルだけだった。
一方的に女性の方が男性の方に話しかけている。
「もう、大須賀センセイの方からマミリンを誘ってくれるなんてチョーゼツはっぴぃですぅ♪」
春海は怪訝そうな顔をしていたが、晴海の方は平然と会計を済ませて喫茶店のドアを開けて店を出ていった。
御徒町亡き今、警備部の勢力が削がれているとはいえ、七瀬真美の存在は副社長派の連中にとって今もなお驚異だったのだ。
ペチコートを着けたターミネーター。
それが最近の副社長派内部での真美のあだ名だった。

シーン3:

越ノ寒梅船内。
船内にいたのは徳重克司、蓼島 稔、クリスティーナ・キルシュシュタイン、柏木竜一の四人。
徳重の方はウルリッヒから来た資料と、自分の手持ちの資料をまとめている最中だった。
副社長や社長の陰謀に付いては、御徒町がすでに地検に送っただろう。克司がまとめているのは、もしトライデントコーポレーションがお取り潰しにあっても、海洋大学が生き残る為の交渉材料を集めることにある。
とはいえ、今までの大騒ぎがトラコの独走であったとしたなら、アメリカ、日本、双方ともに知らないことであるならば効果的とはならない。交渉材料として使えそうなのはMVの実験データくらいである。克司はふと第二次世界大戦での実験データをアメリカに渡し、戦犯を逃げ延びた人物のことが頭をよぎったが、わずかな時間だった。
「すすんでいるか?」
クリスが湯飲みに茶を入れて克司の前に差し出す。
「ほぅ」
「どうした?」
「いや、茶柱なんぞ久しぶりに見た」
湯飲みの中、1センチほどの茶の茎が縦にぽっかりと浮かんでいる。
「それが何か、悪いことなのか?」
「いやいや、吉兆だ」
「ふむ、日本人とはそんなことにでも幸せを見いだせるのか?」
「まぁな、クリスの国のジンクスによく似てるもんだ」
「なるほど」
克司は茶を少し飲みため息を一つ。
「しかし、このリストに私の名前もあるとはな、偽物といってるようなもんだ」
克司が手に取ったのは、あの社長派が生き残らせようとしているという人間のリストだった。
「いや、あながち間違いでもないだろう」
「ん?」
「私の国にこういうことわざがある、『老人が一人亡くなることは街の図書館が一つ無くなるのと同じ事だ』というのがな」
「あははは、昔取った杵柄か」
「日本ではそういうのか」
「でも私はまだ若いつもりだぞ老人扱いは勘弁してくれ」
「そうか、それは失礼した」
そういう二人は笑顔だった。
次の瞬間。
キン!
越ノ寒梅に搭載された海上レーダーに微弱な反応が一つ現れた。
クリスがレーダーをのぞき込む。
「蓼島!」
「どうした?」
克司と呼ばれた蓼島がレーダーを見る。
そこには小さな光点。
「範囲を広げるぞ」
タッチパネルから観測範囲の拡大を選択する。
キキキン!
「六隻はいるな」
「観光船じゃないな、これは」
観光船ならば、ブラウン運動板の影響を避けるため密集船隊は組まない。
「じゃあ、こいつらが何かは簡単だな」
ブラウン運動板が国際法上装備できず、密集船隊を組みまっすぐトライデントに来る船。
「日本防衛海軍、だな。御徒町の情報が発信されてからずいぶんと早い対応だ」
「到着予定時刻わかるか?」
「まだ小笠原の上だからな、普通のスクリューならあと三日はかかる」
「ってことは、日本もあながち指くわえてみてただけじゃなさそうだ」
「こうなるとホノルルの連中も動き出してると考えていいな」
これは悪い話しではなかった。
「あの茶柱のおかげかな」
日本とアメリカからの軍の派遣、ロス=ジャルディン島遺跡内部への侵入を考えていた蓼島達にとってみれば、その混乱の中なら容易に突入できる好機だった。
「じゃあ、わしは交渉するとするか」
「柏木くんと上で突入の相談してくるよ」
「人数が少ないからな、綿密に計画を練るに越したことはない」
この船の中にいるのはこの四人だけではない、ぽつぽつ戻ってきた魚偏のメンバーなんかもいた。
にわかに越ノ寒梅船内があわただしくなってきた。

シーン4:

日本防衛海軍の動きは迅速だった。
アメリカよりも早くトライデントUNに上陸すると、次々とトラコの関係施設を占有していく。
抵抗が考えられた自治警察も、日本防衛海軍の攻撃に一切反撃することなく次々と投降していく。
一部の傭兵が反撃を試みたが海上からのG9ファランクスの銃撃にあえなく降伏、逮捕された。
遺跡の方でも、問題解決後MVの情報を提供し日本での以後五百年間の情報凍結で協力体制を結んだ越ノ寒梅メンバーと共同の突入戦が始まった。

シーン5:

学生運動は最高潮に達していた。
副社長派となった遠野秋桜が先導をした集団だった。
大学講堂を本部とし、立てこもることで日米両軍に抵抗した。
明らかなトラコ関係者ともいえず、両軍は手出しすることができず困惑した。
参加者は800名、実習なんかで遠洋に出ている生徒以外の殆どが、この運動に参加している計算になる。
包囲した両軍のバリケードのスキマを縫うようにして二人の人間が講堂前に立った。
「秋桜さんいる?」
緊張感のない呼び声に、引き留めるはずの両軍兵士は我を忘れた。
ミスワキと桝家春海。
ミスワキは後の研究著書にこう記している。
扇動能力者の存在は過去に何人もいる、彼らは存在するだけで影響を及ぼす。
力の強弱はあるが、彼らが存在することで集団の意志力が増加する。
精神的な縦の繋がりが強化されるといっても良いだろう。
渡り鳥の中で常に先頭を切って飛ぶ鳥。
その鳥ももしかしたらこの能力を持っているのかも知れない。
彼らが正しい判断を誤った場合の悲劇については、過去の様々な歴史が証明している。
それに対して、親和能力者は縦の繋がりを弱体化する。
上司などという後天的な縦の社会の意識を弱らせるといっていいだろう。
私が出会った二人は、この能力をお互いに持っていた。
女性の方が扇動能力者、男性の方が親和能力者だった。
まだその能力がどの様な機構で、どの様に発揮されるのかは不明である。
ダーウィンが環境への適応により生物の進化が起こると言った事に合わせ、時代の不安定さが招いた、社会に対しての適応能力者というべきか。
数時間後、学生達は簡単に解散した。
というか、何故あれほど熱中していたのか誰も訳が分からないといった具合だった。
当事者の遠野秋桜の姿はなかった。
元々ここにはおらず、ビジフォンで指示を出していたらしい。
どこからその指示を出していたのか、その場のリーダー格の学生に尋ねてもはっきりとしなかった。
「多分、遺跡ですかね」
ミスワキのつぶやきに春海が動いた。
「ちょっと行ってきますね」
と、まるで近所の八百屋にスリッパ履きで行く様な口調だった。
「そうだね、気を付けて」
ミスワキが口笛を吹くと、岸壁から二頭のイルカが顔をだす。
「ギュァ」
イルカの鳴き声にミスワキが手を振る、ミスワキが手塩をかけて育てた二頭のイルカである。
「よろしく、ホーリットに松本くん」
手早く、ダイビングスーツを身につけて春海は海に飛び込んだ。
秋桜がいるだろう、ロス=ジャルディン島の遺跡に向かって。

シーン6:

「よし、始めるぞ」
世良の声掛けに、その場にいた全員が頷く。
メインの電源を入れると、機械の中に電気という血液が通っていく音が聞こえる。
「波長クリア、その他コンディショングリーン」
谷保がスイッチを入れる。
「波長調整-0.008、スケルチスタート、ノイズ許容範囲内」
ウルリッヒの淡々とした声。
雅美が静かに目を閉じる。
次の瞬間だった。
「……!」
「どうした?」
「出力制御に異常」
「中止にする?」
「でも、増幅器の方は正常に動いてます」
鈴はキーボードを盛んに叩く。
「影響の範囲が……二乗倍で広がってる」
しんぱいしないで。
語りかけてきたのは雅美だった。
でも、声をだしていない。
直接響く声。
同じ増幅器がどこかで稼働したみたい。
その増幅器の近くにお姉ちゃんと同じ、スセリさんかな、いるみたい。
「変だ」
そうつぶやいたのは世良である。
過1/α送受信装置は、過1/α波を増幅する効果がある。しかし、それには先天的に過1/α波を持っていなければいけないはずだった。
副社長の言うとおり、世良たちがその素質があったとしても、ここまではっきりと届くには現在のスペックでは無理なほどの出力が必要になるはずだ。
「共鳴効果かも」
谷保が計算を始める。
「あっちにも、こっちにも同じ機械があって、それがお互いに干渉してる?」
「干渉による増幅、でも」
「こっちの方がスペックが上のようだね」
谷保が満足そうに頷く。
そして、その時がきた。

この声が聞こえている人はいますか?
この声が届いている人がいますか?
今、私は直接皆さんに話しかけてます。
仕組みを説明すると長くなっちゃうから、手短に話しますね。
今の世界の状況は皆さんがご存じの通りです。
その世界を何とかしようと、科学者とか政治家とか、運動家の人とかが頑張ってます。
でも、世界は上手く動いてくれません。
何故だか、判りますか?
どんなに人間が頑張っても、地球の自転は変えられない、公転も変わらない。
自然……地球が傷ついて、それを嘆く人がいました。
このままでは、地球が人が滅びるって。
その人たちは、それぞれの方法で『人を守る』方法を考えてきました。
この過ちが、判りますか?
自然は何も言いません、全ての人を受け入れてくれます。
どんなに人が、傷つけても。
黙って、それを受け入れてくれます。
今まで傷つけてきたのに、いまさらそれを人の力で癒そうなんて傲慢におもいません?
あ、だからって人が死ねばいいって言ってるんじゃないんです。
人が自然を作るんじゃなくて、人が自然の中にいることを判って欲しいんです。
人は自然にあがらうことで文明を手に入れてきましたけど。
その人の歴史を全部すてようなんて言うことはできません。
でも、この声が届いている人、みんなに考えて欲しいんです。
私は今、新しい方法で皆さんに声を届けています。
人は進化の終末点にはまだ来てません、まだ新しい方法を考えつく事もできるんです。
あなたのまわりを見てください、素晴らしい仲間もいます。
だから、みんなでもう一度、考えてみませんか?
私たちが住む、地球って物を。
物じゃないかも、地球さん、かな。
だから、みんなでもう一度、話し合ってみませんか?
90億人の仲間達と……。
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