シーン1:

「今回、私たちが目指すのは、ロス=ジャルディン島の南海岸より約1クリック離れた地点にある先史文明の海底遺跡だ」
八ヶ岳恵美(やつがだけ・えみ)は鞄の中から幾つかの資料を取り出すと、机の上に広げた。本や写真の中から一枚のチャートを抜き出し、瑠璃の前に差し出す。
そういえば、情報漏れを防ぐために紙ベースで話を進めるんやったな、と瑠璃は思い出しながら、チャートに眼を向ける。
「現場は見ての通り、UNの円弧の中にあるので、高波などの心配は無用だ。もちろん台風が来たときは別だがな……」
「遺跡はどれぐらいの深さにあるんや?」
恵美はチャートを指さしながら答えた。曰く、海底30m前後。スキューバ初体験の人間にはお勧めできないが、この大学の学生ならば問題ない。
「潜水の装備以外に必要なものはありますか?」
宵闇浮月(よいやみ・ふつき)が尋ねた。
「潜水以外?そやな、あとは遺跡探索のための装備もいると思うけど?」
恵美は頷きながら、心の奥底で別のことを考えていた。――多分、武装のことだろう。一応は私もナイフを持って行くつもりだが、後で話をしておこうか。
だがとりあえず、それは後の話だ。
恵美は先を続ける。
「そう、今回の最大の目的は遺跡に行くことではなく、この壁の向こうを探ることにある」前回の探査結果を指でなぞりながら、「この壁にある窪みが、隠された部屋への『鍵』だと私は見ている。そこに……」
「うちのこのペンダントをはめて見ようと言う訳や」
瑠璃はペンダントを掲げた。青い宝石が光り輝く。
「あたいも一口乗らしてくれないか?」
あらぬ方向から声が掛かった。
振り向く一同。
入り口の扉が開くと、そこには瀬名しぶき(せな・-)が立っていた。
「どういう心境の変化だ?あれだけ海藤に迷惑を掛けておいて」
柏木竜一(かしわぎ・りゅういち)が問うた。
「あたいも何となくあそこへ行かなければならない気がする。それだけさ……」
「あのなぁ!?」
呆れながらも食ってかかる竜一を、瑠璃が抑える。
「もう、うちらに迷惑を掛けへんって約束できるんやったら、別に構へんで」
「……しぶきさん」
瑠璃はじっとしぶきの瞳を見つめる。
「どうや?」
「ああ、分かった」目線に耐えきれなくなったしぶきは、明後日の方向を向いて言った。「もう二度と、あんたたちには迷惑は掛けん」
「よっしゃ、これで決まりや」瑠璃は手を叩くと、「あんたらも一緒に、あの遺跡の謎を明かそう」
「そして、この物語に決着をつけるんや」

シーン2:

「瀬名しぶき!?」
扉を出たところで、竜一はしぶきを呼び止めた。だが、しぶきは竜一を無視して歩き続ける。
「おい、待てったら!」
竜一はしぶきの肩をつかんだ。見た目よりずっと華奢な感触に一瞬驚く。
「なにか用か?」
「海藤はああ言っていたが、俺はお前のことを信用した訳じゃない」
「別にあんたに信用して貰わなくても構わないさ」
しぶきは冷たい笑みを浮かべた。――そう、あたいが信じて貰いたいのはただ一人、瑠璃だけだ。
そのとき、しぶきの体が大きく揺れた。
「げほっ、げほげほっ!」
喉をかきむしりながら、しぶきは壁に倒れ込む。
「おい、大丈夫か?」
慌てて駆け寄る竜一。抱き起こそうとするその手を、しぶきは必死に拒む。構わず抱き起こした竜一の眼に、鮮やかな紅色が飛び込んできた。
――鮮血。それも大量の。
「これは……」
「言うな……誰にも、このことは……」
息絶え絶えになりながら、しぶきは竜一をにらみつける。
「しぶきさん!」
病院から抜け出したしぶきを捜していた咲コーヘー(さき・-)は、薄暗い廊下の陰で倒れているしぶきを見つけた。
「早く、病院に!!」

シーン3:

「さてと、行こか」
4月初めの土曜日、瑠璃たち一行はロス=ジャルディン島へと船の舳先を向けた。恵美が前回行ったのと同じように、遺跡の近くにあるブイに船を止め、そこから泳いで遺跡に向かう予定だ。
凪いだ海上を進むこと十数分、一行がブイについたとき、そこにはすでに先客がいた。
「なんや、またあんたか……」
ブイの陰に隠れていた少年を見ると、瑠璃は顔をしかめた。
「お前は誰だ?こんなところで何をしているんだ?」
懐のナイフに手を伸ばしながら、恵美が尋ねる。
「俺の名前は梅成功(めい・ちぇごん)。あんたらが海底遺跡に行こうとしてるって聞いて、先回りをしてここで待っていたんだ」
成功は手を目の高さで組み、中国式の礼をした。そして顔を上げると、
「頼む、俺も一緒に連れていってくれないか?」
意外な言葉に、お互いの顔を見合わせる瑠璃たち。
「今、この島で起こっている不可解なことは、全部あの遺跡が関係していると俺は思っている。あの遺跡の謎が解ければ、この島やトラコの全貌が分かるだろう。それに、あの遺跡には人魚がいるはずだ」
瑠璃たちは円陣を組んで、成功を連れていくかの協議を始めた。
そして、その結果――
「分かった、一緒に行きましょう。ただし、変なそぶりを見せたら置いて行く」恵美が一同を代表して答える。「目的も同じだしな」
「恩に着るぜ」
コーヘーの助けを得て甲板に上がってきた成功は、一枚の防水チャートを差し出した。
「これは?」
「ちょっとした手みやげだ。あんたらも調べているかもしれないけどな……」
瑠璃は
「巡視艇の警邏スケジュールのリストだ。苦労したんだぜ、ここ1週間ばかり張り付きっぱなしだったからな」
「どう?」
防水チャートを恵美は受け取ると、ざっと目を通す。
「前回、私が潜入したときと同じだ。間違いないと思う……」
「とすると、次の警邏時間まではどれぐらいだ?」
スキューバダイビング用の装備を身につけながら、竜一が尋ねる。
「先ほど巡視艇が行ったところだから、150分後だ」
「前回と同じ?それは本当なのか」
成功が眉をひそめた。先のドルフィン便やトライデントプリンセスホテルの爆発事故など、大きな事故が多発しているこのご時世に、警備体制の強化がされていないのはあまりにも不自然だ。
「警備部は私たちの味方だから……」
成功の不安に、浮月が答える。
「それに気にしていても仕方ないだろ。あたいらは何が何でもあそこに行くつもりなんだ」
しぶきは背中にボンベを背負うと、ゴーグルを掛けた。
「……しぶきさん」
心配げなコーヘー。だが、しぶきはコーヘーを無視すると、レギュレータをくわえ海中に身を躍らせた。
「ほんなら、うちらも行こか」

シーン4:

「今から50年ほど前、海上保安庁の巡視船があの島――ロス=ジャルディン島を発見した。……いや、発見したと言うのは正しくないな。1788年以来、実に200年ぶりの『再発見』だ」
早瀬恭平(はやせ・きょうへい)は、ホロペーパーに当時の新聞記事を映し出した。
「発見当初はその神秘性もあって話題になった『幻の島』も、半年も経つと一部のマニア以外からは急速にその存在を忘れられていった。だが、島に上陸した日米合同の調査団は、そこで大変なモノを発見してしまった」
「遺跡……ですか?」
滝智己(たき・ともみ)が尋ねる。
「そうだ」
「デモ、他にも海底遺跡は発見されているネ」
グエン・ホー・ズアン(-・-・-)が指摘する。確かに前世紀に話題になった与那国島の海底遺跡をはじめ、環太平洋地域には多数の遺跡が存在している。
「この遺跡が他のそれと違ったのは、この遺跡に何があるのかを知っていた人間がいたことだ」
「どういうことですか?」
「世界各地に残る人魚伝説のことは、君たちもよく知っているだろう」早瀬はホロペーパーの画像を切り替えた。「ジュゴンなどの海洋ほ乳類の見間違いだと言うのが定説だが、この写真を見る通り、人魚は実際にこの世界に存在している」
再び画面が切り替わる。古びた和綴じの本が映し出された。
「『和漢三才図絵』。徐福伝説……」
海洋文化コース所属の智己がつぶやいた。
「なぜ徐福が、不老不死の伝説を知ったのか?それを疑問に思ったことはないか?」
早瀬は問うた。
「でも、あれは始皇帝を騙すための創作で……」
「それにしても、元となる話がなければ、早々あの様な作り話は出来ないさ」早瀬は不敵な笑みを浮かべた。「先史文明の生き残りか、人魚に関わった人間たちかは分からないが、彼らの間に伝わる口伝があったんだ。そしてそれを知っていた人間が、遺跡発見時の日米上層部の中にいた」
「不老不死を独り占めしようとしたのネ」
意気込むグエン。だが、早瀬はそれを否定する。
「確かにそのようなことを考えた連中もいることはいたらしい。だが、遺跡の調査が進むに連れ、それどころではないことが分かってきたため、状況は変わった」
「それどころではない?」
「ここら辺は俺も又聞きでしかないんだが、遺跡から発掘された石版などの分析の結果、先史文明が置かれていた状況が、現在の我々のそれによく似ていることが分かったらしい。そしてこのままの状態が推移すれば、数十年も経たない内に人類が滅亡するだろうと……」
突然の展開に驚く一同。
「俺の研究室の目的は、先史文明の遺産を研究することで、滅亡へのプロセスを解明することにある。そのために他から見ると過剰なまでの予算がつぎ込まれていたというわけだ」
早瀬はグエンが持ち込んだ資料をぺらぺらとめくると、テーブルの上に放り投げた。
「それじゃあ……」
オリュンポス計画の目的は?と尋ね掛けた智己の言葉は、グエンによって中断される。
「潜りはじめたネ」
早瀬たちは慌てて双眼鏡を構えた。
次々と海中に消えていく瑠璃たち一行の姿が見える。
「全く、瑠璃の奴と来たら……」
歯ぎしりをする早瀬に、智己は呆れたように言った。
「だから言ったじゃないですか。止めても絶対に誰かが行くって」
「そうは言ってもなぁ」
「で、どうします?私たちも潜りますか?」
いそいそとカメラを取り出しながら、智己は尋ねた。
「……ちょっと待て」
早瀬が身を伏せるように合図する。
「どうしたネ?」
「あれを見ろ……」早瀬が指さした先には、いつの間に現れたのか、海洋調査船『かいおう』の姿があった。
「なんでこんなところに」

シーン5:

慣性航法装置の表示に従い泳ぐこと十数分。一行の目の前に海底遺跡が姿を現した。恵美の先導の下、下部に設けられた入り口から中へと進む。
水面にたどり着いた恵美は、空気が安全であることを確認すると、一行にマスクを外すよう合図を送った。
「ぷふぁあ」
「……これが遺跡の中なのか」
ライトに照らし出された遺跡は、大理石の様な素材で組み上げられていた。
初めて見る光景に、一同驚きと興奮を隠せない。
「ほらほら、さっさと装備を用意する」
成功はビデオカメラを取り出し、ディスクの残量を確認する。大丈夫、丸3日間位撮り続けていても問題ない。
ライトを点け、ファインダーを周りに向ける。
しぶきが、コーヘーが、瑠璃が、恵美が、様々な装備をバッグより出すと身につけていた。
数分後、装備を調えた一同は再び集まった。
「で、その壁ってどっちなん?」
瑠璃が尋ねる。
「この先だ……」恵美はライトを暗闇の先に向けた。「そんなに離れてない」
「じゃあ行こうか」
問題の壁は、遺跡の奥に行く手を阻むように立っていた。
横5m、高さは3mにも及ぼうかとする1枚岩の壁。その真ん中に、小さな窪みがある。
「これが問題の窪みやな?」
瑠璃が縁をなぞりながら言った。
「そうです」恵美がうなづく。「大きさから見て、あなたのペンダントが丁度入りそうなのですが……」
「さっさとはめてしまおうぜ、海藤」
成功がじれた様にけしかける。
「だが、この奥にはどんな危険が待っているか分からない。慎重には慎重を期した方がいい」
「その通りです」
竜一と浮月がそれをたしなめる。
「といっても、私たちがここまで来たのは、この先に何があるかを探るためです」
「試してみなくちゃ何もならねーぜ」
恵美としぶきが反論する。喧々諤々の言い争いになろうとしたのを止めたのは瑠璃だった。
「確かになにかあったら困るからな。全員、そのための準備はしとこ。けど、うちらはこの扉を開けるために来たんや。とりあえず試さへんと、ここまで来た意味もあらへん」
「分かった」竜一たち慎重派が肯いた。「それじゃあ、ちょっとだけ準備をするから、3分間待ってくれ」
「そろそろいいか?」
恵美は一行に尋ねた。
有毒ガスの検知器やナイフなど思い思いの装備を手にした面々が肯く。
「では、よろしく頼む」
「了解」
瑠璃はペンダントを台座から外すと、慎重に窪みに向けて手を伸ばしていく。
カチッという音と共に、ペンダントは窪みにはまった。
………。
………。
「……何も、起こらない?」
永遠の静寂の後、コーヘーがぽつりと漏らした。
「きちんとはまっているようだが、なぜだ?」
恵美がペンダントを確認しようとしたその時、しぶきが言った。
「ちょい待ち。……なにか聞こえるぞ」
「なにかって、なんや?」
耳に手を当て、目をつぶるしぶき。
ゴンゴンゴンゴン……。
どこか遠くから、重低音が響いてくる。
「……大きなモノが動いている?そう、まるで機械みたいに……」
「機械?吊り天井とかやったらいやだな」
「笑えない冗談はやめてくださいな」
とかいいながらも、瑠璃を護って後ろに下がろうとする竜一と浮月。
「その心配はなさそうやな。ほら」
瑠璃の指さす先で、1枚岩だと思われていた壁に亀裂が入り、2つに分かれていく。
壁は90度回転すると、通路の側面に収まった。
「有害なガスや病原体は大丈夫のようです」
「よし、ほんなら行こうか」瑠璃は手を挙げると、遺跡の奥に向けて歩き始めた。「これからが本番やで」

シーン6:

「あ、あのさ」
通路を進む途中、成功はおずおずと瑠璃に話しかけた。
「なんや?」
「海藤のその髪って、染めているんだろ?」
「ちゃうけど……」瑠璃は嫌そうな表情を浮かべた。昔、この髪の色でいじめられたことがあったからだ。「なんで?」
「いや、普通青色の髪をした人はいないなーと思ってさ」
何度も瑠璃を怒らせた経験を持つ成功は、愛想笑いを浮かべながら戦術的撤退に移った。
「ほっといてんか」
険悪な雰囲気に陥りそうになった二人を救ったのは、恵美の言葉だった。
「あれ、出口みたい」
通路を出たところは、ちょっとしたホール並の広さの部屋になっていた。
不思議なことに、部屋全体がぼんやりと明るく光っている。
そしてその中心に、一人の女性が座っていた。
「……あ、あれって」
「ああ、間違いないよ」
瑠璃としぶきが顔を見合わす。
「あたいたちを助けてくれた人魚だ……」
二人は女性の元に駆け寄った。
人魚は不思議そうに首を傾げていたが、二人の顔を見ると思い出したように笑みが浮かぶ。
「こ、こないだはありがとうございました」
「あたいも、助けて貰って悪かったな」
人魚の口がぱくぱく動く。
「お、おい。なんて言っているんだ?」
竜一が恵美の脇腹をこついて尋ねる。
「いや、私にも何がなんだか……」
コーヘーや成功に目を向けるが、みな目の前で起こっている光景が理解できない様子だ。
「『ようこそ、子供たちよ』そう言っているのさ」
「そ、そうなんか……って!?」
聞き覚えのない声に振り向くと、そこにはスーツ姿の男性が立っていた。
「どうやら君たちには過/1α波の適性がないようだな。だが大丈夫、もうすぐ君たちにもあの声が聞こえるようになる」
「って、あんたは一体!?」
身構える竜一たちをあざ笑う様に、スーツ姿の男性は肩をすくめた。
「……この方は、トライデントコーポレーション副社長の御陵基春(みささぎ・もとはる)。私たちを未来に連れていってくれるお方よ」
スーツ姿の男性の後ろから、新たな人影が現れる。
「あなたは、秋桜さん?」
「ええ」
現れたのは遠野秋桜(とおの・あきお)だった。
そして彼女に続いて、武装した男女が次々と部屋の中に入ってくる。
「無駄なことは止めなさい。ナイフ程度の武装じゃ、怪我をするだけよ」
慌てて戦闘態勢を取ろうとした竜一たちを、秋桜は制した。
「別にあなた達に危害を与えるつもりはないわ。ただ、あと少しだけ……、ホンの少しだけじっとしていて欲しいだけ」
「うちのおとんとおかんを殺した連中の言うことなんか、信用できるかいな」
瑠璃が叫ぶ。
「そうだ!今まで人体実験を繰り返して、何十人もの人を殺してきたお前たちの言うことなんか、信用できるか!」
コーヘーたちも口々に叫んだ。
「黙りなさい!」
秋桜が銃口を突きつける。
「何もしないでノアの箱船に乗れるあなた達に、殺される私たちの気持ちが分かるものですか……」
秋桜の眼に光るものが浮かぶ。
「殺されるって、どういうことだ!?」
だが、秋桜はそれには答えず、一行を連れていくように指示を下す。
装備を全て外され、後ろ手に縛られて連行されていく瑠璃たち。
部屋に再び静寂が訪れた。
「副社長……」
悲しそうな表情を浮かべる人魚の前に進み出る御陵。人魚を抱き寄せ、その耳にそっとささやく。
「もう少しだけ協力して貰うぞ。エテルナ……」

シーン7-1:

「くそっ、はなせこの!」
旧保安部の面々に連行された瑠璃たちは、遺跡の中の一室に放り込まれた。
「この部屋は旧調査団が使っていた部屋だ。バス・トイレ完備。監視カメラも装備してあるから、変に騒ぐなよ」
そういい残して、扉は閉ざされた。
「おい、開けろ!開けろったら!」
ドアを何度も叩くしぶき。
「やめとけ。体力の無駄だ」
壁に背中を預け、座り込む竜一。
「そやな。それより、ここから何とかして脱出する方法を考えよ」
「くそっ」
最後にもう一度ドアを叩きつけ、しぶきは叫んだ。

シーン7-2:

「早瀬教授、どうするネー」
「瑠璃さんたちを助けましょうよ!」
グエンと智己が早瀬の袖を引っ張る。
彼らは副社長たちの後をつけて遺跡に入り、一部始終を目撃していたのだ。
「助けたいのは山々だが、あっちの方が人数も多いし、しかも武装しているぞ。このまま突っ込んだら、あっという間に蜂の巣だ」
「けど、副社長たちは僕らがいることを知らないネ」
「うーむ」
確かに今の機会を逃せば、次からここに来ることさえも難しくなる。連中だって、入口に監視装置をつけるぐらいのことはするだろうからだ。
しかし、武器も何も持たない今の状態で、旧保安部の連中と闘うのは無謀に過ぎない。
「なんとか外と連絡が取れれば……」
有効な手段がないままに、ただ時間だけが過ぎていった。
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